カセットが「終わった」時に、手持ちの未開封カセットを開けて使ってみようかと
思っていたのだが、カセットデッキが「終わって」しまっては使いようがないので、
使えているうちに一本開けてみることにした。つまり未開封のカセットテープを
開けて、録音してみようという試み。なんて書きながらレコード聴いてたら、
地震が来てレコードの針が飛んでしまった。ええい地震め。
とはいうものの、どれを開けてみようか。今まで捨てずに持っていたものを
開けてしまうのは勿体ない気がする、が、工業製品は使ってナンボ。
このまま使わずに捨ててしまうのが一番勿体ないので、これでいいのだ、と
自分を鼓舞してみる。ヴィンテージワインを開ける人というのは、
いつもこういう気持ちなのか。(値段が違いすぎるとは思うが)
Sony UCX-S 1981年発売
録音メディアとしての磁気テープを、各社が切磋琢磨していたころの製品。
これどこまで伸びるのか!?と驚くような、きらめく高音再生能力が魅力。
本日はこれに決めた。ああ、勿体ない。いや、勿体なくない。なくないんだ。
録音する前にヘッドとローラーのクリーニングも必要だ。
で、オーディオテクニカのキットが登場。大容量100cc。これ絶対使い切れないって。
うっかりして綿棒がボトルに落下。引き出したら、緑色の液体でひたひたに
なった棒が出てきた。
それでは、若干遠慮がちに開けさせていただきます。
もったいなくない、もったいなくない。もったいなくないぞ!
我が生涯に一片の悔い無し!!(うそ)
昭和の空気と共にテープが出てきた。
昭和の匂いは、残念ながら判別できず。
カセットのシールに付いているマークを集めて送ると、かっこういいインデックスとか
インレタセットなんかと交換できたこともあった(まだワープロとかプリンターとか
無い時代)。ちなみにTDKのテープにはベルマークが付いていた。
そしてデッキに収まる。どうよ。どうなのよ。音質を高めることに命をかけていた
時代の、カセットデッキとテープ。デザインもいかしてるぜ。かっちょういい。
じゃ、本日の録音ソースはこのあたりで行ってみますか。
録音開始。このデッキで録音してみるのも、もしかして20年ぐらいぶりなんじゃ
ないだろうか。動いててくれて、本当にありがとう。待たせたな。
昔の経験に基づき、ノイズリダクションは「切」だ。
で、再生開始。実に濃密な音が出てくる。小音量時はノイズもあるものの、音楽が始まって
しまえば全く気にならず。若干ざわつく箇所もあったものの、実に活き活きした音だ。
ああいいなあ。
一番嬉しかったのは、きらめく高音が、自分の記憶と全く同じに再現されたこと。
エッジを鋭く残したまま面を磨き抜いた水晶のような高音。30年も寝かしておいたのに
期待通りの音を聴かせてくれるとは。嬉しいと言うよりも、涙が出そうになった。
工業製品バンザイ。俺に開けてもらうのを、30年待っていたんだなこいつも。
待たせたな。やっぱり、開けて良かった。