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アメリカ人から見た外タレの英語力#9 -言語間のヒエラルキー

今回は歌における、言語間のヒエラルキーについて考えたい。今までの流れで、日本語と英語の間には、明確ではないにしろヒエラルキーのようなものがあり(言語間かも知れないし、文化間かもしれないが)、英語に憧れて英語のフレーズを日本語の歌に入れたりするのではないか、と書いた。実は英語・日本語間だけでなく、それ以外にも今までに同様のことを感じる瞬間があった。

米国の人も、ときどきフランス語のフレーズを会話に挟むことがある。「Voila(ほらね)」みたいな感じで。フランス語は英語よりもヒエラルキーが上なのか?
米語と英語の間にもヒエラルキーがありそう。アメリカの漫画を見ていると、時々米国人女性が英国人の発音にうっとりすることがある。本当にそうなのか?
現在日本人アーティストが向かう先は、米国よりもむしろアジア。浜崎あゆみなんか、香港などではかなり好調らしい(日本のネットニュースによれば)。日本人芸能人のニュースはあちらの国でも報道されているらしいし。しかし、だとすると、香港の歌に日本語のフレーズが入っていたりするのか。

今回はこのあたりを、例によって米人に話を聞いたりしてみた。順を追って展開していきたい。

treeskin01.jpg
木の皮。またも関係ないか・・・。

1.英語とフランス語
 米人たちによると、わずかながらフランス語を上に見る傾向は、特に文化人のような人に見られるとのこと。かつてはフランスが文化の中心であり、それをリスペクトする心はある。ただし、遠い国だった昔に比べ、現在は海外旅行も楽に行けるようになり、インターネット等により世界がフラットになっていることから、昔ほどの格差があるようには感じられない、とのこと。

2.英語と米語
この傾向は、特に米国人女性にはあるとのこと。

・英国の方が古い歴史を持つ
・英国は紳士(Gentleman)と騎士(Knight)の国である
・英国の発音はよりフォーマルで上品である。米語はけっこうカジュアルに、省略した発音等をすることもあるが、英語はしっかりと発音する。

ということで、英国の発音を持つ男性に声をかけられると言うことは、米国女性にとっては非常に育ちのいい人が自分への忠誠心を表明するような、王子様とお姫様ではないかもしれないが、そういうシーンを想起させる、いわゆる一つの典型的なあこがれのシチュエーションなのだそうだ。なるほど、それなら分かる。いや、分かる気がする。

3.英語とスペイン語
現在、米国ではヒスパニック系、中南米から移ってきたスペイン語を話す人たちが急増中。彼らの中には英語を話せない人も多く、企業・学校でもスペイン語への対応が迫られている。将来的にはヒスパニック系が白人の人口を追い越してしまう可能性も高く、米国における一つの問題になりつつある。映画だと、例えばターミネーターIIではシュワちゃんが「Hasta la Vista, Baby」(See you againの意味だが、文脈的には「あばよ」てな感じか?)などとしゃべらせている。今回話した米人二人にとって、スペイン語はエキゾチックな言葉として認識されているようだが、ヒエラルキーがあるのか、という問いには答えにくそうだった。ヒエラルキーが無いのかも知れないし、別の理由があるのかも知れない。

4.日本語とアジア圏
本当に日本語の歌が香港や韓国、台湾などで人気であれば、中国語・韓国語と日本語の間に何らかのヒエラルキーが存在するはず。で、例えば中国語の歌の中に、日本語のフレーズが入っていてもいいはずだ。ということで、台湾・香港Yahoo!のYahoo!Musicで歌詞サービスを調べてみた。韓国Yahoo!は調べず。漢字なら何となく読めるが、ハングルは読めないので。それにしても俺、ヒマだな。

4-1 yahoo!台湾
歌詞を調べようとすると歌購入みたいなところに飛んでしまうので、台湾の歌詞サイト「歌詞帝国」に移動。片っ端から歌詞を当たってみるが、日本語の歌詞はなし。ただし、
・中国語の歌の中に英語のフレーズは入る。
例: 楊丞琳( Rainie Yang ) 「女生我最大」の一部
怎能不~愛妳 BABY
怎能不~挺妳 BABY
IT'S FOR GIRLS ONLY
女生 我最大 別懷疑
元リンク。このフレーズの入れ方、なんつーか、日本の歌と変わらない感じがする。

・日本語歌詞が入った歌は発見できなかったが、日本の歌に中国語の訳詞を載せた歌は発見。
王心凌( Cyndi )「心電心(專輯同名歌曲)」
詞:姜憶萱
曲:Orange Range
手心貼手心 一起 心電心
元リンク。上記の部分、「ぼくらはいつも以心伝心」と歌っているはず。

・台湾のサイトでは、ジャンルが大きく3つ、すなわち中国語の歌「華語歌手」英語の歌「西洋歌手」日本・韓国の歌「日韓歌手」に分かれている。日本の歌手は濱崎歩、HystericBlue(暴暴藍)、浜田省吾など多数を記録。歌手の紹介から歌詞まで全て日本語。台湾の人は日本語読めるのか?
・ちなみに韓国語の歌は韓国語で書いてある。台湾の人、ハングル読めるのか?
4minute( 포미닛 )
머리부터 발끝까지 Hot Issue ho!
내 모든 것 하나하나 Hot Issue
모두 다 Take it control (모두 다 Take it control)
元リンク。もうこの英語フレーズの入れ方、思うに全アジア共通なんじゃないだろうか。

4-2 香港
香港も基本的には同じ。中国語の歌に英語が入ることはあっても日本語は入らず。
・ただ、トップページの女性歌手一覧には現地歌手に混じって濱崎歩、Aikoなんかも入っているし、外国人ページで安室奈美恵がCeline DionやAlicia Keysと並んでいるのも壮観だ。
・日本語の歌には、ローマ字による歌い方、中国語による訳詞がいちいちついている。

以上総合すると、日本語の歌詞が現地の歌に混じることはなく、むしろ英語フレーズが入っているという状況は日本と同じ。歌を調べる限り、英語が上位に来ているという状況は変わらず。アジアの歌と英語圏の歌の間に、日本語の歌が入っている、というような状況には見えない。
ただ、日韓の歌に人気があるという状況は嘘ではないようで、歌から判断する日本語のポジションは、いわゆる英語-日本語のような関係ではなく、日本語-韓国語のような横並び、良く行って日本語-フランス語のような、若干斜め上のような関係なのではないか、という気がした。

次回は、米国における土地の大きさと楽曲のプロモーションについて考えてみたい。

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2010年2月11日 12:38に投稿されたエントリーのページです。

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