FLOOR C-02
出張報告・SkyScreamer
SkyScreamerは登録商標です。
写真については、MGM GRAND ADVENTURESの許可がおりたら掲載します。
ごめん、許可おりませんでした。従って写真なし!(July 28,1997)
出張日 1996年11月19日
場所 アメリカ・ラスベガス
ラスベガスには巨大なホテルが林立しています。これらホテルは様々な
アトラクションを付加させています。ここのところナイトショー等に加え、
ホテル内に遊園地、あるいはライドを作ってしまうホテルが多いようです。
これらのアトラクションは主として子供のため?でしょうか。ご両親が
カジノで遊んでいる間にあんたたちはそっちであそんどいで、という感じで。
最近ではニューヨーク・ニューヨークがホテルの周囲にぐるりとローラー
コースターを作ってしまいましたが、あれってうるさくないのだろうか。
その他室内に2回ひねりコースターを作ったサーカス・サーカス、塔の上に
コースターを作ったストラトスフィア等ありますが、今回私が訪れたのは
MGMホテルに隣接したMGM GRAND ADVENTURES。この中のライドである、
SkyScreamerに乗るためです。
SkyScreamerは高さ250feet、最大速度は70mphに達する世界最大の
ブランコ型のスカイコースターです。(96年11月)同時に3人まで使用
使用することができるワイヤーが2つあります。同様のものは国内にも
ありますが、ここまで巨大なものはまだないのではないでしょうか。
MGM GRAND ADVENTURES内は、平日のせいか人影はまばら。アメリカの平日は
すいているのか、休日はどうか、と言われても分かりませんが。ホテル付属に
しては大きな園内を真っ直ぐに乗り場に向かいます。
見えてきました。80m以上の塔は想像以上に高い。そこから豆粒のような人が
野太い悲鳴と共に落ちてきて、目の前を飛び去って自分の背後に舞い上がっていく。
わくわくします。切符売り場へと足早に移動します。
塔は2つあり、一つは人がぶら下がる塔。もう一つは人を上まで巻き上げる
ウインチの付いた塔です。
塔の回りはぐるりと広場になっており、ベンチやテーブルが多く設置されています。
みんな落ちてくる人の悲鳴を聞きながら笑っています。いい雰囲気です。
一人で確か20$程度。2人、3人でさらに安くなります。同行者が一人いましたが、
一人の方が怖くて面白そうだったので一人で挑戦。乗り場にはさすがに10人くらい
並んでいました。
ビデオ・写真サービスはそれぞれ10$。その横を通って、いよいよ準備です。
ハンググライダーに乗るときに使用するようなプロテクターを着用します。
身体にかかるGを全体で受けるためでしょう。靴の下にはバーを一本かまして
足を固定します。このバーは乗り場まで持って歩きます。なんだか拘束具を
付けられた囚人のようです。順番が来たので乗り場に向かいます。乗り場の
周辺は芝生に所々植木のある、見通しのいい広場。歩道には青地に白で
飛行機のマークが印刷されています。係員に連れられて移動していきますが、
このとき既に浮足立っています。
電線作業用の高所作業車のようなリフトに載せられます。空中には既に
飛んできた人が浮かんでいます。リフトが上がります。目の前で係員が
彼を取り外す1分ほど、横で待ちます。彼がどいた後その場に立て、と
合図されます。けっこう頑丈そうなハーネスをかちゃかちゃと付けて、
最後に「じゃ、3,2,1,Goと合図するからそしたらこれを引くんだぞ」と
言って右腰の赤いボールを指します。へ、自分で引いて飛ぶの?
リフトが少し下がりました。急に足が浮いてぐるんとからだが回転します。
緊張が急激に高まります。チェックの後で係員が「Have a nice fly」と
言い残してリフトは下がっていきました。いよいよです。
いつ巻き上がるのだろう、と思う間もなく足からゆっくり巻き上がり始めました。
ワイヤーが弛んでいるせいか、急速に上がったと思ったら少し動かない、
という状態を繰り返して高度が段々と上がっていきます。気がつくと
人がまさに豆のように小さくなっていきます。自分をつり下げている
ワイヤーのぶら下げ先は見えません。はっと思って横を見ると
ホテルの向こうがどんどん見えてきます。隣のホテル、砂漠の向こうの山、
わー、良く見えると思っていたら気がつきました。
視界が狭くなってきてます。
視野狭窄でしたっけ?ホテルならホテル、下なら下で物は見えますが
その他のものが全く見えません。いかん!俺は大丈夫か!?
腰にある赤いボールを右手で握ってみました。
どこまであがるんだろうと思っていた矢先、静かに私は空中に止って
いました、といってもワイヤーで下がっているので頼りなくぶらぶら
してるわけですが。既に頬に夕方の風がいつもなら心地好いはずの
強さで当たります。でも今は風が当たっているなとしか考えられません。
いきなり後ろの塔についているスピーカーが落ち着いた声で言います。
「Are you ready? 3,2,1,go」
あ、はいはい分かりました。引けばいいんでしょと赤い玉を引きました。
プンと開放された一瞬、私は記憶がなかったようです。
ウルトラマンの様に両手を前にだして飛ぼうと思っていました。
加速の最初は0km/hから始まるはずなので、余裕はあると思って
いました。しかし全て遅すぎたようです。
あ〜〜〜〜っっっ!
気がつくと自分の悲鳴と共に既に45度くらい下っていました。
ぐぐっと体にGがかかります。軌道が円弧を描くのを感じます。
既に相当な速度がついていました。大きな風切り音と共に下の景色が、
笑いながら見ている歩道の人が飛び過ぎていきます。
上空で速度が0になります。50mくらい上がったかな、と思ったら
今度は足側に向かって落ち始めます。しかし今度の加速はそれほどでは
ありません。ようやく自分の腕が縮こまっているのに気がついて
おずおずと、はずかしげに両手を伸ばします。もう遅いっつうの。
その後3往復ほどしますが、このときはピーターパンさながら心地好い
空中散歩を楽しめます。すると係員がつかまって止るためのリングを
差し出します。これをつかんだら急激に止って肩が脱臼するのでは、
と心配しましたが、リングは伸縮し楽に振幅を押さえることが出来ます。
リフトが上がってくると、次の人が既に待っています。横になったまま
まず足を開放してもらい、両足をついてからワイヤーを外します。
のどがからからに乾いていました。
乗り場の近くで日本のおばさんがのんびりしていました。
「あなた、腕をだしてなかったわね、どうして?」
「いや、いきなりで出してる暇がなかったです」と答えましたが
顔には悔しさがにじんでいたかも知れません。
見ていると、いろいろな人が飛んでいます。親子3人で叫びまくって
いるお母さんの横できょとんとしている子供、カップル、マッチョな
男2人組。そしてそれを見ている人。とてもいい雰囲気です。
今でも思いだすとむずむずしてきます。チャンスがあれば
遠慮なく飛びにいきたいと思います。つくづく思いました。
アメリカ人は楽しむ天才だ。
以上
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Updated at Jan. 30,2000